Published on 12月 19th, 2013 | by monsterdive
楽器教則アプリ『TAKUYAが教えるギター・レッスン “Guitar de POP”』が出来るまで【第1回】
アプリそうけんをご覧のみなさま、はじめまして。MONSTER DIVEの清水と申します。
今回からコラムを執筆させていただくことになりました。まずは自己紹介を!
MONSTER DIVE(モンスターダイブ)はWebと映像のプロダクション企業です。
お得意先はエンタメ系からビジネス、官公庁関係まで幅広く、モノづくりにこだわる「オタク+職人」をコンセプトに掲げてWebサイト・Webシステムや映像コンテンツの企画製作、アプリケーション開発やUSTREAMやニコニコ生放送のライブストリーミングまで、デジタル分野に関わる様々なクリエイティブ業務に関わってきました。
社員17名の少人数ながら創業5期目を迎えまして、オフィスを東京・西麻布に置きながらも夜遊びすることなく、眼下を行き交うリアルがとっても充実されている方々に面白がってもらえるモノを作りたいと、日々、妄想と構築に励んでおります。
さて、モバイルアプリの分野では、
- ソニー・ピクチャーズ公式アプリ
- ドラマ『SPEC』壁紙アプリ、アラームボイスアプリ(TBSテレビとの共同プロジェクト)
- リクルート『SUUMO/みんなの街』アプリ
などの制作・開発実績があります。
今年(2013)に入ってから自社ドメインによる事業展開、いわゆる自社モノをスタートしまして、中でも最も力を入れてリリースしたのが“楽器の教則”をテーマにしたアプリ。
今回のコラムでは、どのようにして楽器教則アプリを開発・リリースしたのか、そしてそのタイトルでApp Store有料アプリランキングで上位ランクイン(分野別トップセールス1位)を獲得したのか、その実例をもとにiOSアプリのリリースにまつわるTipsや課題を、数回に分けてご紹介させていただきます。何かひとつでも皆さんのお役に立つ部分があれば…!
なぜ楽器教則アプリなのか?
世はアプリ群雄割拠の時代。受託開発を行ってきた僕らのような業態の企業(デベロッパー)も、みなさまご存知の通り、数多くパブリッシャー側へと参入しています。そう、僕らは作り手としては経験値があっても、販売元としては完全に出遅れ感が否めない状況だったのです。デベロッパーはクライアント企業へ成果物を納入した時点で業務完了ですから…。
「ゲームを作るか? ツールを生み出すか?」
自社ドメインで生み出すタイトルの方向性を決めるにあたって、トレンドとテクノロジーの視点からいくつも企画が上がり、社内のラボ(実験的な取り組み)として実際にプロトタイプを作ることもありました。企画時点では“いいね!”と妄想は膨らんだアイデアも、実際に設計を突き詰めていくと今ひとつ面白さが具現化出来ていない。ディレクターでありプランナーとして参加した僕自身の力量の無さを痛感しつつ…ひとつの結論が見えてきました。
僕らはゲーム屋ではなく、また、アカデミックに技術開発を行うタイプの集団でも無い、ということです。
スマートフォン/タブレットの普及とApple/Googleによる環境の整備により、ハードウェア、ソフトウェア、そしてマーケットと、すべてにおいてアプリケーション開発・販売の敷居が下がりました。結果として多くの優れたタイトルが生まれた一方、残念なことに「作ってみた」程度でリリースされているタイトルも多く見られます。餅は餅屋。ゲーム会社には培ったノウハウがありますが、ともすれば、僕らがソーシャルゲームを作ったところで、「作ってみた」から頭ひとつ抜け出すことは出来なかったでしょう。“良い”と“ふつう”の狭間を超える強さが無いからです。
モノづくりの根幹は、作る人の熱量にかかっていると、僕らは考えています。
これをある種のオタク気質と言い換えて、僕らは「オタク+職人」という標語を掲げているわけですが、プロダクション事業を“現業”として取り組みつつ、自社タイトルの企画を手抜きなく進めるためには、自分たちの好きなコトであること、没頭出来るコトである必要があると考えました。
そこでまずは自分たちの強みをシンプルに整理しました。
- チームのメンバーは創業前から映画や音楽などエンタメ分野の業務経験が豊富なこと。
- 自社でスタジオを持ち、映像のクリエイティブチームがいること。
- アーティストご本人やその近辺の方と(なぜか)親しくいること。
早々に“音楽×映像のアプリ”という方向性は固まり、必然的に導かれたコンセプトが“楽器の教則アプリ”です。
ここ十数年、教則本・教則ビデオは媒体の変遷はあれどコンテンツのフォーマットとしては変化しておらず、残念なことに価格帯や利用シーンも大きくは変動していませんでした。これは音楽コンテンツのパッケージが多様化している中で、不思議な状況です。イノベーションとまでは言わないまでも、新たなスタイルが企画出来るはずです。
一方でYouTubeやニコニコ動画には多数の「弾いてみた」やアマチュアの方々のレッスン動画が存在しています。それらを見るように気軽にモバイルデバイスで楽しめて、アマチュアではなくプロフェッショナルの演奏から、技術を目で盗めるコンテンツがあれば面白いのではないか? と考えました。
儲かるかどうか、流行っているかどうかは重要ではありません。
何よりも、プロデューサーが元ギター少年で、制作チームは音楽好き、という前提でのキックオフでした。
製作着手から約半年。
2013年11月、『TAKUYAが教えるギター・レッスン “Guitar de POP”』がリリースされました。
元JUDY AND MARY/ROBOTSのギタリストTAKUYAさんとの共同開発です。
TAKUYAさんご自身が温めていたギター教則に関するアイデアとも合致して、制作に全面参加いただき、全編撮り下ろしの映像コンテンツを収録したiPhone/iPad用アプリという、他に類を見ないタイトルに仕上がりました。
次回はこのアプリの機能設計について、そしてプロモーション展開の裏側について、書いていきたいと思います。